日本では(意匠的に)良いデザインのプロダクトというのはごく一般的なのでしょうか?
日本人は一般的に簡素を好む。日本の簡素さは西洋のシンプルとは異なる。近代の到来から300年ほど前に、日本は独自の簡素さを旨とする美を発見し、身につけてきた。
二つの調理用の包丁をご覧いただきたい。一つはドイツのヘンケル製。人間工学的によく出来ていて大変使いやすい。これが西洋流のシンプル。握ると自然に親指の位置も決まる。しかし、超絶技術を持つ日本料理の板前はグリップに凹凸のない包丁を使う。平板な把手は貧しさや未成熟ではない。むしろその逆である。どこを持ってもよいという完全なプレーンさが、板前のあらゆる技術を受け入れる豊かさになる。これが日本流の簡素さだ。
簡素でありながらもそれが貧しさにはならず、むしろゴージャスさを凌駕する美につながる。そういう美意識が日本人の感覚の奥底に眠っている。それが日本の建築やハイテク技術、そして無印良品などのミニマルなプロダクツの背景をなすものだ。弁当も、決して凝りすぎてはいけない。旬の素材を簡単に調理し、手早く美しく作る点が肝要である。